大学中退率の全国平均は2%前後——私立・国公立の差と経営影響を読み解く


大学中退率の全国平均は2%前後——私立・国公立の差と経営影響を読み解く

「せっかく入学獲得できた学生が多く中途退学している」「わが大学の在学満足度や学生対応力が欠けているのか」など、学生募集に関わる部門と教育・学生対応に関わる部門との、もどかしい対立がある私立大学は多いのではないでしょうか。

「本学の中退率は全国平均と比べてどうなのか」「地域のライバル大学、競合大学と比べてどうなのか」など、時系列的な推移を含め、こうした数値を把握しそれが持つ経営的な意味、課題理解を進めていくことは重要です。

大学中退率の全国平均は2%前後、という事実から出発する

中退率

文部科学省「令和6年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」によれば、令和6年度における大学の中退者数は50,516人、中退率は2.00%でした。この数値をどう読み解けばよいのか。本稿では、4年制大学と短大、私立・国公立の差や時系列変化のデータなどを詳解しながら、大学経営、生き残りへの課題等につながる考察を進めたいと考えます。

短大の中退率は相対的に高い水準にある

公開最新の文部科学省「令和6年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」によると、学校種別中退率は以下のとおりです。

学校種

中退率(令和6年度)

大学

2.00%

大学院

2.67%

短期大学

3.95%

短期大学の中退率が大学のほぼ2倍に達している点、大学院も大学(学部)よりやや高い水準にある点は構造的な違いとして押さえておくべきところです。「大学中退率は2%前後」という言い方は、あくまで大学(学部)の数値であり、大学院・短期大学まで含めた比較では水準が異なることに留意しておく必要があります。

考察1.短期大学での中途退学対策、対応を考える

全国的に時系列で短期大学への志願者、入学者、ひいては募集(定員)総数が減少傾向にあることは特に説明を要するまでもないと思います。

女子を中心とする短大の場合、4年制大学との競合だけでなく、専門学校群との比較検討も多いこと、居住する自宅圏(地方)を前提とした検討者が多いことなどを背景に、就学後のいわゆるミスマッチが存在する可能性が大きいことを踏まえた入学後の各段階での個別での学生の意識把握が特に求められる状況にあると言えます。学校法人内や地域内での4年制大学への3年次編入の制度的整備、介在などが重要となって来ます。

中長期的には短大設置、学部・学科などの発展的改廃などを検討する必要に向かうことも排除すべきではありません。

とはいえ、私のコンサル経験から何より大切なことは学生個々の状況を把握していく調査活動を入学時データから整備して、学生個々のための支援を強める施策ができているか、それが十分に機能しているか、だと考えます。

近年での経年推移を確認する

大学・大学院・短期大学・高等専門学校を合わせた全体の中途退学者の割合は、文部科学省の各年度公表値によると、令和3年度1.95%、令和4年度2.09%、令和5年度2.17%、令和6年度2.10%という推移をたどっています。令和3年度から令和5年度にかけて上昇が続いた後、令和6年度でわずかに減少しました。単年度の数値だけで「改善した」「悪化した」と判断するのは早計であり、複数年度の推移として見る視点が必要です。

なお、休学者の割合についても令和3年度2.17%、令和4年度2.24%、令和5年度2.95%、令和6年度2.95%と推移しており、令和5年度にかけて大きく上昇した後、令和6年度は横ばいとなっています。中退率単体だけでなく、休学者の動向もあわせて見ることで、学生の在籍状況全体の変化を把握しやすくなります。

平成時代(10年前)との変化を確認する

さらに、過去に実施された同省同趣旨調査として代表的な平成24年度末時点の状況調査(平成26年度=2014年公表)との変化を紹介しておきます。

4年制大学、短大の何れも平成時代の方が中退率がやや高い水準を示しています。

学校種

中退率(令和6年度;2024)

中退率(平成24年度末時点;2012)

大学

2.00%

2.37%(国立1.16%、公立1.06%、私立2.81%)

大学院

2.67%

1.8%〜2.3%前後(※当時の個別公開データ・参考値)

短期大学

3.95%

5.63%

考察2.過去に比べ中退率は低水準に縮小。コロナ禍の影響は小範囲に留まった

私の長年のコンサル経験から、かつては中途退学率は、さらに高い水準であった、というのが実感です。それは、本来入学できず、いわゆる滑り止め大学への進学、学風や就職時評価などへの情報不足、認識乖離などから再受験を含めた中途退学が一定数存在したこと、逆の視点に立てば、大学側の学生対応の不足、ケア不足に起因する中途退学が多かったこと等が要因でした。

2%という水準は、入学者側、大学側のミスマッチや対応努力不足が是正された結果である側面も評価できることだと考えられます。

加えて、令和2年度入学者からのコロナ禍という特殊事情も踏まえれば、キャンパス通学機会の減少、対面授業の中止などのネガティブ要因があったにも関わらず、中途退学率の大きな上昇がみられなかったことも注視しておくポイントです。

私立大学(学部生)の中途退学率は3%程度か

私立大学(学部生)の中途退学率は3%程度か

設置者別(国立・公立・私立)について、文部科学省「令和6年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」から抽出すると、国立大学:1.20%、公立大学:1.23%、私立大学:2.88%となっており、相対的に私立大学が国公立の2倍程度の中退率となっています。私立大学は学生数・大学数が多く、学費負担が経済的理由による中退に結びつきやすいという構造要因が背景にあると考えられ、同一の設置者別内での競合比較を調べてみる必要があります。

経年推移を確認する

さらに、過去の代表的な平成24年度末時点の状況調査(平成26年度=2014年公表)では、国立大学:1.16%、公立大学:1.06%、私立大学:2.81%となっており、大きな変化は生じていないことが把握できます。

なお、参考として同調査での「休学者」数の割合(休学率)では、大学(学部生)全体の平均休学率は2.21%でしたが、設置者別の内訳は国立大学が最も高くなっています。(国立大学:2.45%、公立大学:1.95%、私立大学:2.15%)

中退率とは反対に、休学率においては国立大学が私立大学を上回る結果となっていました。これは国立大学において留学や、研究・進路模索のために休学を選択する学生が相対的に多かったことが要因として挙げられます。

考察3.私大での経済的理由による中途退学増加と対策のもたらしたもの

文部科学省の先導的大学改革推進委託事業として実施された「経済的理由による学生等の中途退学の状況に関する実態把握・分析等及び学生等に対する経済的支援の在り方に関する調査研究」報告書(平成27年度調査・小林雅之編、2016年3月公表)は、平成24年度に「経済的理由」が中退要因の第1位となったことを受けて行われたとされています。

報告書から明らかになった調査当時の「経済的理由による中退」の具体的な要因や構造、提言の要点は以下の通りです。

1. 単なる「学費未納」にとどまらない複合的要因

調査では、経済的理由による中退は、単に「お金が払えない」という単純な問題ではなく、以下のような複数の要因がドミノ倒しのように絡み合って発生していることが実証されました。

  • アルバイト過多による学業不振:学費や生活費を補うために深夜までアルバイトを詰め込み、授業に出席できなくなったり単位を落としたりして中退に至るケース。
  • ローン回避(貸与型奨学金の敬遠):将来の返済(借金)を恐れて奨学金の利用をためらい、その結果生活が困窮して学業を断念するケース。
  • 経済的困窮が招く精神的圧迫:家庭の経済不安や周囲との格差が強いストレスとなり、大学生活への不適応(引きこもりや意欲低下)を引き起こす心理的側面。
  • 成績不振による支援の打ち切り:一度成績が下がると奨学金の支給が止まってしまい、経済的に完全に手詰まりになる悪循環。

こうした状況を踏まえた大学側が講じる施策は、文部科学省からの働きかけもあり、その後ある程度実施され、改善されたのでは、と想像されます。

しかし、地方や大学・学部により、その影響度は差異が大きいはずですので、自学の中途退学率、退学者数だけでなく、その理由について丁寧に把握していくことも重要です。

自校の中退率を評価する視点

自校の中退率を評価する視点

規模・偏差値帯による傾向と現場の実態

文部科学省の定期調査では、大学の規模や偏差値帯による中退率の違いは分析・公表されていません。そのためこの観点は、断定できる数値ではなく、傾向として扱う必要があります。学生数の少ない大学ほど、学生一人ひとりへの目配りはしやすい一方、募集面での余力に乏しいと指摘されることがあります。経営環境の変化の影響を受けやすいという傾向も、あわせて指摘されることがあります。

考察4.私大での中途退学率を左右する本質的要因とは

私は、四半世紀にわたり、100を超える大学(学校法人)と協議の場を持ち、数十の多様な大学の課題解決、マーケティング・ブランディング戦略、中期計画づくり等に関与して来ました。そのプロセスでは多くの既存データ再分析、リサーチも実施して来ました。

そうした経験から敢えて言えば、経済的要因は、学費が相対的に高い学部・学科で主要な要因になるのですが、一般的な学部・学科の中では、入学時満足度、入学後の周囲の学生に対する評価、教員等への敬意、評価に左右されることが大きい実感を持っています。

ある程度の学生数の私立大学であれば、その競合大学も含め、近年の卒業生、在学生に対する一定の調査活動を加えることで、今後、自学が生き残るための課題、解決可能性につながる発見があるはずです。

総括.中退率と大学経営

中退率と大学経営

定員充足率・私学助成・ブランドへの影響

中退率の上昇は、大学経営において複数の側面に影響し得ます。

第一に、定員充足率への影響です。中退者の増加は在籍学生数の減少に直結し、収容定員に対する充足率を押し下げる要因となります。

第二に、志願者からの評価やブランドイメージへの影響です。中退率の高さは、在学生の満足度や大学の評判に関する情報として、受験生や保護者に伝わる場合があります。

さらに、私学助成への影響です。私立大学等経常費補助金の算定では、収容定員に対する在籍学生数の充足状況が考慮される仕組みがあります。

追記.中退率を抑制した上で

中退率を抑制した上で

各私立大学の存続、発展のために

中途退学率をめぐる自学の状況、推移と課題発見と対策を講じる一方、多くの私立大学、特に地方大学にとり重要なことは、10年先を見据えた視点での入学者確保、学生教育のあり方、卒業生の社会評価の戦略づくりだと言えましょう。

従来の学生募集広報の規模、コミュニケーション戦略、イメージ戦略等で解決できる時代は終焉しつつあります。競合優位の競争戦略でもなく、自学の持って来た価値、今後担う価値を考え、本質的な戦略を構築し、実践していくこととなるはずです。

梅本 嗣

教育コンサルタント

教育機関向けコンサルタント。U.M.E. 代表。大手広告代理店でマーケティング戦略や事業戦略、中央省庁・自治体の長期戦略づくりに携わったのち、大学・教育分野の専門チームを立ち上げ、現場のコンサルティングを20年以上担当。ブランディング戦略、入試広報改革、中期コミュニケーション計画づくりで全国の大学に伴走してきた。2019年に独立し、現在は少子化のなかで存続の岐路に立つ地方私立大学の課題解決に軸足を置く。学生募集の立て直しから学内の合意形成、経営改善まで、現場に入り込んで支援している。一般論ではなく、実例と数字で書く。青山学院大学経営学部卒。

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